今、目の前にある声優アーティストの岐路

この二日間のライブの感想で、奇しくも似たような事を書いてしまっている。
茅原実里がステラシアターで水樹奈々エタブレを歌った。それは、まだ全く売れていなかったころの茅原実里が、2005年1月の水樹奈々武道館ライブを見たことにより、無謀にも自分の目標を武道館に定めた事からも、ある意味彼女の原点を見直すカバーだったのではないだろうか。
茅原実里は、その後ハルヒ長門でブレイクし、結果その夢を実現することになる。
そして、その夢の原点となった水樹奈々も、実はその武道館に立った当時、まだ自分の夢を追いかけている途中でもあった。
水樹奈々は、当時その歌唱力を名曲「POWER GATE」によって広く知らしめている存在ではあったが、世間的には「単に歌唱力のある声優」という認識以上には至っていなかったと思う。しかし、武道館の前年「リリカルなのは」とフェイトというキャラと出合う事により、アイドル声優として大スターへの道のりを歩み始めることになる。
つまり、その武道館ライブは、茅原実里にとっての長門との出会いから生まれたシンデレラストーリーの流れが始まる2006年のライブゲートライブと、規模では全然違うが、同じエネルギーのあるライブであったと言える。その何かが始まる煌めきの様なものを水樹奈々から感じ憧れたからこそ、茅原実里もそれに続く存在に成り得たのかもしれない。
しかし、その後の茅原実里は、目標であった武道館ライブ成し遂げた後、モチベーションをどこに定めるべきか大いに悩んだことをドキュメンタリーで赤裸々に語っている。
それはアーティストにとって最大の難関と言えるだろう。目標の無い活動ほど辛いものは無く、またそういった目標はある意味「降ってくる」ものであり、努力とかで手に入るものではないから。思うに茅原実里は、今現在もその難関から抜け切れていないような気がする。
そして、そんな茅原実里に道を指し示した、より大きな存在であるところの水樹奈々はどうなのだろうかと思う。
水樹奈々の活動は、少なくとも声優として今に至る流れでは1998年の頃から続いている。もう15年になる。しかし、彼女の源流はさらに奥深く、実際には演歌から来ているだろう。そしてその歌手としての目標はといえば、当然の様に美空ひばりの名が挙がる。やはり、水樹奈々の心には最大の目標として、美空ひばりの伝説の武道館「不死鳥コンサート」があるだろう。
そして、その東京ドーム公演は水樹奈々自身も達成してしまった。今の御時勢、アーティストにとっての目標が武道館であったり、東京ドームであったりを終点とする必要はまるでない。より大きな会場もあるし、海外だってある。だから、茅原実里にしろ、水樹奈々にしろ、その先を見据えることはいくらでも出来るはずだ。
しかし、自らの心に定めた終着点は、一度辿り着いてしまうとその先の道を見出すのはかなり難しいかもしれない。茅原実里水樹奈々も、今のところどこか足踏み状態が続いているような気がしてならない。
水樹奈々の活動が15年にも及ぶように、今、声優界で歌でも活躍している声優では、やはり活動期間の長いベテラン勢がより大きな活躍をしている。しかし、その後ろを追い掛ける若手の勢力も大きくなっているし、その年齢層もより若くなってきている。変化の波が迫ってきているかのような印象すら感じられる。
今、声優アーティスト、アイドル声優達の目の前には、もしかしたら大きな岐路が存在しているのかもしれない。
とは言え、長年私たちを楽しませてくれている彼女達を今後とも応援し続けたいし、末永く活躍してくれることを祈るばかりだ。