UQ HOLDER!という物語の、向かう先を考える

UQHという物語について、考えている。
この物語は不死者の物語だという。しかし、それは少し不思議だ。
不死者の物語、それは普通ならどうしても不幸な物語となるだろう。普通の人生を歩めない、人という存在から外れた異形の者。それが不死者だ。そのような存在に、普通ならば本当の幸せは訪れない。そのことは登場人物であるエヴァンジェリンも繰り返し語っている真実だろう。
しかし、赤松健がそのような不幸な物語を好き好んで描くだろうか。あの、ハッピーエンド絶対主義の赤松健が。そこがどうしても腑に落ちない。
このUQHという不死者の物語には、途轍もない大きなどんでん返しが有るのではないか、そう思わないと納得が出来ない。
そこで、ハタと気付いた。この物語の世界が「ネギま」と繋がっているのならば、ネギまの世界で最後に残された「解決出来ない命題」が、この矛盾を解く鍵に成るのではないかという事に。
その「解決出来ない命題」とは、「作られた人たち」のこと。ネギまの世界では、魔法使いの手で作られた魔法世界が存在し、そこには魔法によって作られた人々が暮らしている。その作られた人たちは、自らの人格と意志を持ち、ごく普通の人生を生き、自分たちが作られし存在であることも認識していない。普通の人間から見ても全く同じ人間なのだ。
しかし、彼らは作られた存在として、普通ならばその魔法世界から出る事は出来ないし、創造主である魔法使いの手にかかると、花弁の様に消されてしまう脆い存在でもある。人の心を持つ全く別の存在、それが作られた人々だ。彼らは、ネギまの世界ではその存在が示されたところで物語が終わっている。そんな脆い存在である彼らは、その後どのような運命を辿ったのか、あまり明確には示されていない。
そして、その魔法使い=始まりの魔法使いによって作られた存在が他にも居る。それが、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルだ。
彼女は、始まりの魔法使いからも「娘」と呼ばれ、特別な存在らしい。始まりの魔法使いも不死なる存在であり、その活動を開始した時期は定かではないが、一説にはエヴァが生まれた600年前(UQHでは700年前)頃から活動を開始したという事にも成りえる(魔法世界では2600年前に世界を作った事になっているが、魔法世界の時間の流れが違うため、エヴァが生まれた時期と一致する)。
彼は、エヴァの実験の後、魔法世界を作り、魔法世界人も作った。つまりエヴァの不死の力は、魔法世界人=作られた人たちが存在する力と同じ原理である可能性がある。作られた人たちには寿命があるようだったが、その存在の脆さは、ある意味エヴァの不死の存在の脆さと同じだろう。彼らの違い、不死か不死で無いかは、一種のPCプログラムの設定程度の違いでしかないと言えるかもしれない。
・・・ネギまの主人公ネギや明日菜も、実はそれらと同じ不死なる存在だった。ネギが不死の存在となった経緯は、刀太の場合と少しだけ似ている。戦いの果てに生身の肉体をすり減らし、その体の全てを魔法の力に置き換えてしまった。それは刀太が一度死んだからこそ不死になったのと同じものだ(この共通項から、刀太にはまだ隠された設定の可能性がある)。彼らは、特殊状況で生身の体を失くさざるを得ず、魔法で維持される体を手に入れて不死となった。
作られた人たちも、ある意味同じ魔法で維持されている体を持った存在だ。作られた人たちも一個の人格として認められ、その生きられる場所が魔法世界以外でも可能となってきているようだった。それに、彼らの生きている未来は、宇宙開発が進み、無限の空間を手にいれようとしている世界でもある。
ならば、その様な未来世界では、不死なる存在が、不幸な存在であり続けると言えるだろうか。
魔法で維持される体を持った人々が多数暮らし、その存在を認められている世界。その世界では、寿命の有り無しは魔法の設定によっていくらでも変えられるかもしれない。ならば、人生の価値観も全く違うものに成りはしないだろうか。
作られた人たちの脆さ、不死者たちの不幸は、生身の生命を至上のものと捉える当たり前の価値観からすると、絶対に覆らない「解決出来ない命題」かもしれない。
しかし、時は未来。宇宙と言う無限の空間を手に入れ、その過酷な環境にその活動圏を広げていこうとする人類にとっては、その「当たり前の価値観」は無意味なものになるかもしれない。そうなれば、ネギまで示された「解決出来ない命題」にも答えが出たことになるだろう。
もしかしたら、このUQHという物語は、赤松健がその答えを物語として提示するために、その人類の価値観そのものをひっくり返す壮大な世界観を提示するために、作られた物語なのかもしれない。
UQHの世界、そこでは人類が宇宙空間で暮らすために、生身の身体よりも不死で不死身の身体を選択することが当たり前の時代、だったり。
ならば、一足先にそんな身体を手に入れていたネギはもとより、そんなネギに憧れ、ネギの為に死をも厭わないほど尽くしたクラスメイト達は、その後の人生でどのような選択をしたのだろう。
・・・私は、UQHにネギまクラスメイト達の大半が昔の姿のまま登場しても、全然驚かないよ?(^^)