「 Yes!ベストパートナー」の嬉し恥ずかしゆり展開と、その中で示されていたこと

もう、見ていてニヤニヤが止まらない(*^^*)。「いちごパニック」に続く、アイカツ上、見ていて最も幸せになるお話として認定したい回だった。しかし、それだけでは無い。
これも脚本はゆにこ様。「いちごパニック」の時も1期の後半に入って物語が動き始めた時に、正にその勢いを加速するかのような、実に上手いタイミングで上手いエピソードを作ってきたけれども、今回もそういった効果が出ている。
物語を作っていくと、絶対に登場人物の立場に明暗が生じてくる。人生には良い面もあれば悪い面もあるということ。けれども、アイカツという明るいこども向け作品においては、どうしても明の部分だけを取り上げてしまい、暗の部分は隠されていく傾向がある。もちろん、子供の為のエンタメなのでそのままでも良いのだけれども、やはりそのままでは物語が平板になるし、いつかはどこかに無理があるように感じてくる。
そして実際には、物語の面白さとは、そういった物語の中に生まれた暗の部分を明確にして、なにがしかの方法で明に転嫁することだったりする。
「いちごパニック」の時は、新たなアイドルが続々と出てきてさらに上を目指すという展開が加速していた時期。いちごは今まで「アイカツ楽しい」だけで来たけれども、その裏にステージに出れない者が居る事を意識する回となっている。選ばれた自分はそういった裏の存在が居る事も含めて、ステージで最高のパフォーマンスを見せなくてはいけないという自覚を、仲間に支えられつつ認識する。仲間との友情の物語として深く、またアイドルの自覚としても深い、実に良い話だった。
今回の「Yes!ベストパートナー」も、正に同様の深みがある。
まず、美月の発表した美月とみくるのペアユニットWM。スターライトにもドリアカにも属さない存在として、両学園を脅かす存在であることを誰もが懸念することになる。二期の前半に示されたスターライトとドリアカの対決が、結局ドリアカのティアラ学園長のあけっぴろげで陽気な態度から、知らぬうちに慣れ合いになっていってしまった事に対して、WMの登場はアイドル界にはやはりこういった力関係がある事を改めて提示している。
けれども、物語としてはベストパートナー選びとして、アイカツ史上最も嬉し恥ずかしなゆり展開…いやいや、バラエティーに富んだ友情の駆け引きの方向に展開する。
それはもう、全てのカップリングが楽しくて仕方が無いのだけれども、特に、あおいがベット上で同室のいちごのベストカップリングとしてセイラを推すシーンとか、その少し切ない表情などが堪らない。
そして、カップリング展開は残されたユリカ様とかえでの二人の動向に集約していく。
この二人は、実は美月出奔の最大の被害者といえる。トライスターとして絶大な人気を持っていたであろう時期に美月の気紛れで解散を余儀なくされているはず。その時の状況は今まで不明瞭だったけれども、今回少しだけ描かれている。それは「残党と思われたくない」とかえでとペアを組むことを頑なに拒否するユリカの態度からも類推することが出来るだろう。
この二人の動向は、物事の発端WM結成と、ある意味対比となっている。人気の有る者、美月が奔放に振る舞い人気を得ていくのに対して残された側の苦境を示し、それはアイドル界の明暗を描いていると言えるだろう。
しかし、それでもかえではユリカとのペア結成を強く求める。かえでは実はその理由を明確な言葉にしてないのだけれども、それだけに、二人の理由の無い繋がりに、美月という運命によって引き合わせられたことに強い意味を感じされられる。そして、その運命を受け入れて先に進もうとする二人の態度に、アイドルに対する強い想いを感じさせてくれる。
「いちごパニック」がアイドルが個人で持つべき自覚についての物語だとすれば、「Yes!ベストパートナー」は、アイドルがその世界の中で持つべき自覚の物語と言えばよいだろうか。
これは、アイカツの1期がいちごというアイドル個人にクローズアップされた物語だったのに対して、2期がアイドル業界全体の物語にスケールアップしている事も示している。
「Yes!ベストパートナー」は、シリーズ上屈指の嬉し楽しい回だったのに加え、アイカツという物語がより大きな物語に成っている事を示す、大きなエピソードに成っていたのではないかと思っている。