寿美菜子 Second Live Tour 2014“make x” 東京国際フォーラム ホールA

寿美菜子のセカンドツアー。前回のアルバムから1年半以上。それからシングルはいくつか出しているとは言え、次のアルバムの発表がない中でのツアーは少し面食らった感じ。
寿美菜子への評価は、もう明確に固まっている。とにかく歌がべらぼうに上手い。声も硬質で力があり、彼女が掲げるミナコロックを歌うには最適な声だ。
そして、彼女の最近の声優の活躍も素晴らしいもの。自然な感じの声と演技で、聞くものを楽にさせる雰囲気がある。
彼女の存在全体がどこかアーティスティックな雰囲気を醸し出していて、歌のライブにしろ声の演技にしろワンランク上の印象を与えるほど。その立ち位置は坂本真綾の雰囲気に近い感じ。
そんなだから、ライブはとにかく安心して楽しめる。内容はかなり観客の参加を求めるものであり、ライブレコーディングとか、観客の練習も含めてしっかり時間をとってやったり。キレの良い歌、キレの良いダンス、雰囲気のあるアコースティックコーナー、勢いのある手馴れた感じのピアノ弾き語り、そしてライブレコーディングと、実に上質で、密度の濃いライブに酔いしれた。
しかし・・・
彼女の素晴らしいセンスを目の当たりにしていると、楽しさの反面、どこか心の底が冷えてくる感じがする。それと言うのも、私がどうしようもなくアニメオタクだから。
こんな素晴らしいライブであったとしても、実は、それは自分が求めているものではない。そりゃそうだ。例えポールマッカートニーのチケを差し出されたとしても、ダイミダラーのミニライブに行くであろう人間だから。
寿美菜子はそのオリジナル楽曲にアニメタイアップがなく(もちろんスフィア名義は除く)、彼女がオリジナルのアーティスト活動を続ければ続けるほど、彼女の活動はアニメから離れていく。それが堪らなくさみしい。アニオタの性だ。
戸松遥はタイアップを幾つか持ち、前回のツアーでもアニソンを絡めてくれた。高垣彩陽は常にアニソンを絡める事を欠かさない立ち位置を保っている。しかし、豊崎愛生寿美菜子は、アーティスト活動をすればするほど、その内容はアニメとはかけ離れていく。それは、そのライブの質が高まれば高まるほど、より強く感じさせられる。
彼女たちはスフィアという活動を通じてアニソンに大きな功績を残してきている。だから、そこから外れる個人の活動ではアニソンから外れても良いのではないかという読みはあるかもしれない。今のご時世、アニソンがフラットな目で見られる雰囲気もあるし。しかし、個人的にこの寂しさはどうにも無くすことはできない。今後も彼女たちの方向性は変わらないように思えるし、そこで成功を重ねていく気もする。しかし、それは私の求めているものではない。そんなことを自覚してしまうライブだった。
Take Me Higher」一曲歌ってくれるだけでも、印象違うのだろうなあ。オタクとは欲深いものだ。