[アニメ]異界としてのアイドル業界、そしてバーチャル世界

なぜ最近アイドルアニメが成功しているのか。
このことについては以前にも書いたことがある。最近は「楽曲」「画質」「プロモーション」全てが潤沢に揃っていて、アイドルアニメが成功しやすい状況にある。しかし、なによりアイドルアニメが求められている理由は「アイドルに物語が発見された」から。
一昔前のアイドルは、選ばれた者だけのものだった。容姿と歌と性格とが全て完璧に揃っている者がただ見出されるだけのもの。そこにはシンデレラとして選ばれる一瞬だけの広がりの無い物語しかないし、視聴者に親近感を持ってもらう事も難しい。
しかし、最近のアイドルは違う。誰もが夢見て、それを目指して努力すればアイドルになれるかもしれない。元々は普通の少女だった者が、努力して努力してアイドルになっていく。そこにはスポ根に近い物語が存在し、誰もが親近感を持って見守ることが出来る。
このアイドル業界に関する意識の変化は、AKBやももクロの成功とか、普通の女の子達のファッションに対する意識の変化(容姿レベルが全体的に上がっている)などによるものだろう。が、ここのテーマではないのでこれ以上は掘り下げない。
アイドル業界が誰もが目指せる身近なものになった。とは言え、そこは未知なる憧れの世界でもある。目も眩むような輝きの世界であるように思える反面、どのような困難が潜んでかも分からない。憧れのヒーロー、ヒロインが居るかもしれないが、悪徳プロデューサーや意地悪な先輩などの魑魅魍魎もいる。そこは日常の外側に在る世界。現代の普通の女の子にとっては、正に最も身近に意識することの出来る「異界」そのものだろう。
アイドル物語は、云わば現代における異世界ファンタジーそのものと言う事が出来るかもしれない。
ところで、現代の異世界ファンタジーには、一つの描かれ方が主流に加わってきている。それは、ネットやゲームなどによるバーチャル世界を舞台にしたもの。「SAO」や「ログホライズン」など、本来ならば仮想の現実でしかないものにちょっとした仕掛けをして現実と同等にすることで、物語として成立させる。バーチャル世界という現実の科学で実現可能な身近なものを、ファンタジーと同様の重さの物語にしている訳だ。
そして、「現代における異世界ファンタジー」としてのアイドルアニメにおいて、このバーチャル世界の演出が加えられていることが多いのが面白い。「アイカツ」におけるアイカツシステム、「プリパラ」におけるプリパラ(このプリティーリズム世界は、実はファンタジー世界そのもの)など。
アイドルの物語が異世界ファンタジーとして身近なものになり、バーチャル世界の物語も新たな身近なファンタジーとして認められている。この両者は今後も密接に関係し合い、今後のファンタジーを描く際の肝に成っていくような気がする。