NANA MIZUKI LIVE THEATER 2015 -ACOUSTIC- さいたまスーパーアリーナ

水樹奈々でSSAのアコースティックとなると、思い返すのは一昨年のOPUS2。あれはオーケストラだったけれども、やはり生オケをSSAのような馬鹿でかい場所でやるのは音響的に無理があったように思う。
そんなイメージがあったので少し及び腰だったのだけれども、今回はあくまでアコースティックコンサートとして、エレキ系を使わないだけ。音響的な問題は生じないだろうと参加してみた。
敢えてアコースティックにするというからには何か仕掛けがあるのだろうと思ってはいたが、実際には「仕掛けだらけ」で驚かされた。
まず最初から異様に思うのが、普段客席となっているアリーナ内に大きく幕がかけられている場所が3カ所あること。どうもサブステージらしいのだけれども、なにやら機材で幕が盛り上がっていて、何があるのか気にかかる。
実際にライブが始まってみると、メインステージは実にシンプル。神父に扮したトムくんのパイプオルガン(これもし本物なら凄いが)と水樹奈々だけで、ステージのイメージは教会。しっとりと始まり、アコースティックライブのイメージどおり。そして、水樹奈々自身から、これからこのコンサートは「シアター」の名前の通り物語仕立てで、いろんな事が起きますよと紹介される。
で、現れたゴンドラ(本当の船のゴンドラを模している)に乗って向かう先の幕の外れたサブステージは、中世の街角を模したセットになっていた。後二つのステージもファンタジー世界と場末の酒場のセットだった。バンドメンバーも全て物語世界の住人の役回りをしていてその衣装も着ており、正に会場全体が物語世界の箱庭の様になっていた。
パフォーマンスも様々な趣向がこらしてあり、アコースティックと言う事でタップダンサーチームが現れて水樹奈々自身もタップダンスをしたり、コーラス隊が現れたり、アコーディオンが参加したり、ブラス隊が現れたり、以前ライブサーカスで出たピエロが参加したり。親愛では当然の様にSuaraが出てきたり、そしてサプライズゲストとして保志総一朗が出たり。(二日目は速水奨だったらしい)もうやり過ぎというくらいの内容だった。
物語は「教会に通う歌の好きな少女が、友達を求めて街に出かけたり、ファンタジー世界に行ってしまったりして、最後は酒場で歌ってその歌を認められる」的な感じ。水樹奈々自身はステージ上で特に演技をするでもなく、物語を進めるのはいつも通り事前に作られた映像なのだが、その映像の語り部能登麻美子で、それだけで物語世界に誘ってくれるというものだ。
水樹奈々の歌の真骨頂は、バラードなどを「歌い上げる」ところ。しっとりとした曲の方がそのビロードのような歌声を堪能するのに最も適していると思ってる。アコースティックライブは正に望ましいのだけれども、同時に普段の激しいライブを求めているファンには物足りなくなるかもれしないという危惧はどうしても付きまとっていた。これまでオーケストラライブなどをしていながら、結局いつも通り激しいライブにしかならなかったのも、そう言った危惧を作り手も感じていたからかもしれない。
しかし、今回のこの試みは、そう言った危惧を完全に払しょくしただろう。これは水樹奈々の新いライブの形として、いや若しくは水樹奈々ライブの最も望ましい形として提示されたようにも思う。素晴らしいライブだった。
ただ、一つだけ注文がある。もし、こういった物語仕立てにするのならば、物語世界に誘うためにも、水樹奈々自身がその場で演技をして欲しいもの。完全なミュージカル仕立てにする事も可能だろう。この部分だけは堀江由衣に一歩遅れを取っているw。次は是非挑戦して欲しいものだ。