朗読劇 私の頭の中の消しゴム7th letter 鈴木拡樹×竹達彩奈 天王洲 銀河劇場

この公演は以前茅原実里出演の時も参加している。その参加した時にも書いたのだけれども、実は私はこの物語が大嫌いだったりする。
ここで描かれていることはとても「当たり前のこと」。人が病にかかり死に至る。どこにでもあることだ。それをなぜ物語として認識するのかといえばこの病を「珍しい」と認識するから。その死を、その不幸を、不可思議な事として「面白がる」から。この物語は他人の不幸を面白がる下種な野次馬根性にあやかっているだけ。多くの悲劇がそういった野次馬根性を煽るように作られているのは事実だが、一つの病の特性だけを道具に使っている辺りが実際にこの病にかかっている人への侮辱に感じてしまう。この作品でこの病が広く認知されるという視点もあるだろうけれども、このような生死に係る知識をこんな不確かな物語で知ったつもりになることの方が危険だと思う。
とにかく、見ているだけで不愉快になる物語。それなのに何で見に来たのかと言えば、それはやはり竹達の生の演技が見たかったから。
実際のところ作劇としてはとても良くできた作品であり、起伏に富んだ内容なのでその演技は見ごたえがある。竹達のヒロインとしての声の強さについては普段から魅了されている者なので、その生の演技を聴く機会を逃したくは無かった。
元来とても明るく楽観的で、少し庶民臭いところがある親しみやすい声。その全てを赦してくれるかのような雰囲気は慈愛にも通じる。そんな魅力的な声が、絶対的な悲劇に塗れる壮絶な展開はやはり聴きどころではあるだろう。竹達はそんな起伏に富んだ展開を充分に演じきっていた。
聴く価値、観る価値のある舞台ではあるだろう。しかし、やはり物語に対する嫌悪感から見ているだけで心の底が冷えてしまう自分が居る。
もういい加減別の演目にしてくれないかな。