シスター・プリンセス Re Pure キャラクターズを語る(暫定版)醃 〜千影〜「哀しみの檻」

  • ストーリー

深い森の中、千影は一本の樹から黄金に輝く禁断の果実を手に入れる。これを兄くんに食べさせれば二人は永遠の世界にいけるのだ。眠りについている兄くんに果実を食べさせようとする千影だが…。

  • 解説

千影の魔力とは一体なんだろう。実際にあるのか、それとも彼女の空想の産物なのか。
千影は、兄くんへの恋慕を明確に自覚し、また、それが罪であるという事も認識している。自分がいかに罪深い存在か理解している。ならば、その深い罪の意識から自身の精神を守る為に、自らを魔界の住人という特別な存在とし、兄との関係を前世の因縁であると「空想」しているとは考えられないだろうか。
魔術的な事象が全て彼女の空想上の産物であると仮定した場合、今回の出来事は次の様に考えられる。
千影が最初に兄くんへの恋慕を意識したのが、誕生日に林檎の木を植えてもらった時からだとすれば、その感情をその林檎の木に重ねてしまう。 そして彼女の中では、募る恋心=増大する罪の意識がその林檎の木の成長と重なり、抑制が図られる。
しかしそれ故に、その木に実が生った時、その罪を達成する=契りを結ばなければならない、という意識が芽生えてしまう。
彼女はその日を「贖罪の日」とよび、その黄金の林檎を「二人だけの世界へ旅立つ果実」とする。近親相姦という禁忌の前に二人の死すら意識し、(もしくは、心中こそが契りと認識しているのかもしれない。)欲望に身を焦がす彼女は限りなく悲しい。
そんな彼女を兄の一言の寝言が現実に引き戻す。それは金の林檎の呪力から解き放つほど、彼女にとって幸福な言葉だったのだろうか。
しかし、だからこそ、彼女は兄への恋慕の情を捨てる事が出来ない。そして、その想いを己が魔力へと昇華しつづけるのだ。

  • 音楽

「Magie」
岡崎律子にとって珍しいジャズ風の歌。しかし、これほど千影の内面にある、熱い情念にあった曲調はないだろう。
歌われているのは、愛するものへの恨み。一見、愛する人への忠告の様でいて、実際には、愛するが故にその者へ心が捕らわれていく自分自身を嘆いている。忠告の裏に愛してしまった恨みを潜ませているのだ。
その愛は誰にも知られてはいけない哀しい愛。その愛によって、自分が全く異質なものに変わっていく事を感じている。それは兄くんを愛したが故に魔術に溺れていった千影そのものだ。
とても激しく、怖い曲だ。曲を作った者、岡崎律子の底の深さを改めて感じさせてくれる。