シスター・プリンセス Re Pure キャラクターズを語る(暫定版)醬 〜春歌〜「織姫を演じる」

  • ストーリー

兄君さまと七夕祭りの日のデートを約束した春歌。しかし当日、雨が降ってきてしまう。落ち込む春歌だったが、兄君さまが表れると…。

  • 解説

秀逸な演出と作画でシリーズ中最も完成度が高いと言われるこの回。まずは映像をじっくり堪能すべき作品だ。春歌のしぐさや表情、一つ一つが実に自然で、また印象深い。
春歌も姉妹の中では年長組に入る。それを考えると、その兄君さまを想う気持ちはかなりエキセントリックだ。春歌の兄君さまを想う気持ちに陰りがない。兄妹恋愛へのタブーの意識が完全に欠落しているのだ。
その原因として、一つには彼女の育ちがドイツであり、そこで純和風に育てられた事が挙げられる。その教育でかなり間違った感覚を備えてしまったのかもしれないというものだ。
しかし、春歌は弓道などスポーツもよくし、聡明さを感じさせる少女である。その彼女がこの歳に至るまで、そんな普遍的タブーに気付かないものなのだろうか。
そこに春歌という女の子の不思議さがある。
今回の物語の中で、春歌は兄君さまとの七夕のデート日に雨に降られる。彼女は、自分を彦星に会えない織姫と重ねて嘆く。
しかし、それは演技。
雨が降ってきたからといって兄君さまと会えなくなるはずはない。当然兄君さまは雨の中でも春歌の元にきてくれるだろう。
春歌の顔が喜びに変わる瞬間は印象的だ。今まで演じていた悲劇のヒロインの表情が、兄君さまを確認すると即座に笑顔に切り替わる。彼女は自覚的に悲劇のヒロインを演じている事がわかる。
もしかすると、表面上エキセントリックな春歌の、本当の胸の内は、聡明な彼女の演技力によって隠されているのではないだろうか。
春歌は無邪気に兄君さまと祭を楽しみ、まるで恋人の様に接する。しかし、その兄君さまへの想い、その真実は春歌自身にしか判らない。

  • 音楽

「春の歓び」
ゆったりしたワルツの旋律が、何処か祭の熱気を思わせ、その甘い歌詞と合わさると、恋に上気した少女の体温を感じさせる何とも言えない曲になっている。
二人の間に告白を妨げる何があったのか、また、二人の行く末に何か問題があるのか、それは判らない。ただ愛を得た少女に怖いものは何もないのだろう。