ToLOVEる―とらぶる―にうる星スピリッツは流れているか

少年ジャンプ連載という、超メジャーなベタベタラブコメのアニメ化。
この作品が「冴えない少年の元に」「空から宇宙人の美少女が降ってきて」「心ならずも結婚していまい」「逃げ回っているうちにトラブルが起きる」という、正にラブコメの金字塔、高橋留美子原作の「うる星やつら」フォーマットをそのまま使っているのは、誰もが承知していることだろう。
そして、その「うる星やつら」のアニメ化の際は、今や世界的に有名な押井監督が係わった事により、今のオタク文化を形作ったと言っても良いほどの、激しいエネルギーと斬新さを併せ持つ、一大アニメシリーズとなっていた。
ならば当然、今回のこのアニメ化においても、先人の偉業に肖って頑張って欲しいもの。
というか、実際に見ていて思ったのだが、このアニメ「ToLOVEる」、ほんの少しずつではあるが、アニメ「うる星やつら」を意識している風なところがあるのが興味深い。
例えば、冒頭の宇宙の戦闘シーン、影の付け方は正にうる星がやっていた往年のSFアニメ風。
リトが告白を失敗するシーンの事態のエスカレート具合や、象の大群に引かれた時のリトの手のポーズは正にるーみっくだ。
ザスティンが呼び寄せた空を覆うUFOとか(元々は「未知との遭遇」からだが)、最後の落ちとしての「宇宙引き」なども、うる星でよく見かけた描写。
そしてなにより、流れているBGMまで所々で「うる星やつら」的だ。
絶対この制作スタッフ、意識しているw。
とは言え、ただ単に、シーンとか、演出とか、音楽を真似したとしても、あの「うる星」のように偉大な作品にはならないだろう。
アニメ「うる星やつら」の凄さは、なによりそのスピリッツにあった。「とんでもない事をしてやろう」「自分のやりたい事をやってしまおう」「この作品に対する愛は絶大だ」(「うる星」アニメシリーズ中盤では作り手の情熱が暴走していたw)という「想い」こそが、あの壮絶なエネルギーを持つ作品を形作っていた。
今の時代、そんなものを求める事自体無茶なのかもしれないが、アニメ「ToLOVEる」に「うる星」の残滓のようなものを見てしまうと、道理を引っ込めても何かを期待してしまいたくなる。
アニメ「ToLOVEる」の制作スタッフには、是非頑張ってもらいたいものだ。