ギルティクラウン 〜期待・・・けれども、若者の実感をなめている感覚〜

うん、感想書きたくなる作品だよね。
「アキラ」的な人災を引き起こして、「コードギアス」的に他国の統治下に置かれた近未来の日本で、学生生活に燻っている若者が「メガゾーン23」的に統治者に反抗しているアイドルと偶然出会い、ロボットに襲われてたので「少女革命ウテナ」的にエンゲージして、少女の胸から取り出したのは「サイレントメビウス」の剣皇グロスポリナー的な剣だった・・・、という話。
人災で大変な目にあっている日本って、正に今の日本と同じだから、実にタイミングが良い。この導入だけで引き込まれそうなくらい。もちろん、311の前から企画があったのだろうし、偶然の一致といえるのだろう。
けれども、案外そうでもなくて、今の日本は、311の前からひどい事になるだろうという雰囲気があったとは思う。少し前になるけど「バトルロワイヤル」とか、世代間搾取的な事によって若者がひどい目にあっている未来の日本の想像図。そういう点では、311の偶然を除いても、実に意欲的な作品と評価したい。
内容的には、上に挙げた粗筋のように、実に厨二病的というか、ベタベタのアニメ的。言ってみれば「全能感」バリバリの作品ともいえる。けれども、「現実を映したかのような近未来日本像」が根底にあるので、そこをテコにして、結構ライトオタクも見られそうな作品となっている。まあ、「コードギアス」と似た雰囲気と言えばよいか。
けど、2話まで見てみて、作品の出来はあまりよくないと思ってしまった。というのも、世界観を提示する事ばかり雄弁で、キャラクターの行動原理に、結構隙がある感じがするから。これって、きっと感情移入のしやすさ、とか、分りやすさ、とかを考慮した結果なのだろうけれども、2話にして結構大きな隙が見えるのは、あまりいただけない。
気にしているところは、もちろん2話の最後、主人公がテロリスト集団の勧誘を拒否して学校という日常生活に帰ってくるところ。
これはねえ、こういう展開にしたい理由も判るし、この行動自体も決してすぐさま矛盾になるわけではない。けど、駄目な描写だよなあ。
日常を捨てきれない学生、という気分を描きたくなるのは分る。その方が若者が感情移入しやすそうだ、という判断は正しいように思える。けれども、それは現実の厳しさを知らない若者だからこそ生じる感覚。
このギルクラの日本は、実は国民の生殺与奪権すら持たされている軍隊に支配されている狂気的な国家だ。おそらく、この作品の最初の設定を見て面白そうだと思った若者は、その設定に、今の自分の住むこの国と同じだと、感情移入していることだろう。主人公が目の前で住民が殺されているのを見たことすら、深く共感しているとも思える。現実に、定職にも就けずに社会に搾取され続けている若者には、似た様な感覚があると思える。
だから、今の若者には、主人公がテロリスト集団に勧誘されれば、当然受けることしか想像できないはず。自身に圧倒的な力があるのに、今までの「クソのような日常に戻りたい」という感覚など全く理解できない、と感じる方が多い気がする。
このあたりが、この作品を作っている製作陣の大いなる甘さ。勘違い。
もし、物語的に学園モノを絡ませたいというのならば(その方が感情移入の度合いはどうしても大きいので、その選択は間違いではない)、主人公をもう少し違う性格にする必要があっただろう。
今の流されやすくて視聴者の受け皿になりやすい性格ではなくて、どこと無く独自の価値観を持っていて一見とっつきにくそうだけれども、その価値観を理解すると応援したくなるような性格の主人公とか。つまり、今の社会に不満を抱いているのは当然だけれども、それを何とかできるような独自の価値観を持つ主人公が力を得たからこそ、物語が動き始めた、みたいにすればよい。もちろん、そんな主人公だからこそ、誰もが受けるであろう勧誘を断って学園生活を続けているという展開にも成り得る。
何にしても、世間は動いていて、若者の感覚もどんどん進んでいる。311のボランティアで壮絶な現場に赴いた事もあるような若者にも、支持されるような作品を目指して欲しい物。そんな可能性がまだ少し残っている気がするので、この作品にはまだ暫く期待したい。