「けいおん!」と「ドラえもん」 〜けいおん!は何故売れたのか。その2〜

けいおんの売れた理由は、唯のキャラクターをのび太になぞらえると判りやすいかもしれない。
のび太は駄目駄目な少年だが、単に駄目なだけの少年としては描かれていない。実は、大切な物に対しての根気とか、妙な部分でのセンスとか、何より正義感とか、実は一つ型にはまれば英雄にもなれるのでは無いか、と思わせる資質を持っている。
ドラえもんという作品は、「ドラえもんが未来の道具で不可能を可能にさせてくれるところ」が夢があって面白いから人気があると言われるが、実際にそれだけでは人気も長続きしなかっただろう。
見る人が感情移入するのび太に隠された資質の中に「優越感」を与えるものが潜んでいるために、知らない内にそれを手にすることによって「何故か楽しい」と思わせるような仕掛けになっているのだ。
けいおんも同じだ。唯は駄目駄目な少女だけれども、実際には単に駄目なだけでは無い。その中に潜む音楽性は、長年音楽に真剣に取り組んできた梓をも惹き付ける、万人に影響力を与えるかも知れない可能性を秘めている。見る人は、それを無意識に感じ取って、知らず知らずに「優越感」=「全能感」を得ているのだ。
まだ彼女達は学内で演奏するのがやっとの存在だ。けれども、いつか広く認められる時が来るかもしれない。その時のPVがエンディングの映像であり、そして、それが正に現実になったのが、物語世界の外側である視聴者の応援で実現したオリコンの順位であり、アリーナのライブ、という事だ。
けいおんの売れた理由は、まず少女達の日常を丁寧に描いているからといわれているが、実際にはそれだけではないだろう。その裏で知らずに与えられる「優越感=全能感」こそが、見る人を夢中させるほどの力を持っているのだと思われる。「隠された全能感」という意味で、実に上手い設定と言えるだろう。

唯がのび太だとすると、ドラえもんは憂なのかな。