宇宙海賊は、権力に媚びへつらい正義も無い、最悪の組織なのか? 〜モーレツ宇宙海賊〜

先日、サトタツ監督の作品が「誠意が無い」などと酷評してしまったが、その理由が「ぱっとしない」とか曖昧な理由しか書いていない事が気になっている。やはり、こういう事はもう少し明確に説明しないといけないだろう。より批判を強めるだけなので、あまり気が進まないのだが。
まずは、モーパイ。実際には、この批判は原作の笹本氏にも向くと思う。かなり原作に忠実に描かれているから。
結局、この作品のダメな所は、以前にサトタツ監督の「ラグりん」を批判した「登場人物の目的を語るという事、語らないという事」の内容にも被ってくる。というのも、この作品も登場人物の目的意識を曖昧にして、物語の本質をぼかしている事が、「重大な物語の問題」に繋がっているから。
つまり、この作品の主人公、加藤茉莉香は一体なんで海賊をやっているの?
この事を明確に出来ない構造がこの物語の中に存在する事が、最大の問題だ。
まず、海賊の存在意義が曖昧だ。どうやら、海賊行為を「しなくてはならない」ので、イベント的に客船などを襲って、生計を立てていたりするらしい。そのイベントは、客船の方から依頼されている風な描写もある。そこで、海賊にたてついた乗客を殺す演技とかも見せたりして。
だが、このイベントの本質は一体どこにあるのだろう。乗客にスリルを味あわせるためのイベントでしかない?本当に?
私略免状を貰うということは、国から悪事をして良いと認められた事。ならば、人を殺しても罪にならない?では、茉莉香のような善人でなくて、殺しをなんとも思わない海賊がいたとして、このイベントは行われない?
いや、行われるのでは?だって、このイベントの依頼主は、どうも保険会社らしいのだから。人一人殺されて保険料を払っても、海賊行為が横行しているというイメージをイベントで作れれば、保険に入る人が増えて多額の保険料を稼ぐ事が出来る。つまり利益になるでしょ?
それで、海賊ショウとかいっているけれども、実際には命や財産が危険に晒されているのも確かなのだから、笑っていられるのは裏事情を知ってる旅慣れた金持ちだけで、多くは海賊を、仕方なく保険金を払う理由と考えるのでは無いだろうか。
これ、とんでもなく悪質な保険勧誘詐欺だ。なんといっても会社ぐるみ、国ぐるみの詐欺なのだから。この行為、正義も無ければ、自分の力に依って立つ尊厳もない、最低の行為だろう。
・・・まあ、これだけならば、状況に流されてやっている程度の理由は立つかも知れないが、実際にはそれだけでは無い。
次の大きな仕事は、お姫様から依頼された黄金の船探し。これもひどい。
まず、姫を信頼した理由が判らない。ただ姫様である事を確認しただけで、その言葉を「信じて」いる。そして、もっとひどい事に、依頼された黄金の船探しの目的を聞いていない。
これがどういう事かと言うと、もし、その依頼の目的が大悪事であろうとも関係ない。ただ権力者からの依頼だから引き受けた、と言う事になる。・・・最低だ。
例えば、このセーラームーン似の権力者の探す黄金の宇宙船が「大量破壊兵器」であり、その目的が「反逆者の大虐殺」だとしたらどうだろう。茉莉香は何も言えないだろう。というか、茉莉香はそれがどうであろうとも関係ないと思って、その辺りを聞かないのだろうか。そういう事に、とても気が回る娘だったはずだし。
・・・
海賊船とはどういった存在か、あの海賊ショウにはちゃんとした保障があるのか、それを茉莉香はどういった気持ちで受け入れているのか、また、何故茉莉香は姫様を信じたのか、なぜ姫はその船を捜しているのか、もし理由を隠しているのならばその素振りはあるか、などなど、本来語らなければならない部分が大幅に零れ落ちているので、こういった難癖がいくらでもつけられてしまう。
おそらく、情報を制限する事によって物語のミスリードを誘い、視聴者を面白がらせようとでもいう考えなのかも知れないけれども、あまりに貧弱な展開で、バカにしているのかと思ってしまうくらい。
これをもって「侮っていない」とは言って欲しくないほど酷く、ついこんなにも愚痴を書いてしまう。
本当に酷い。
・・・次は「ラグりん」なのだけれども、これも酷い。