アニオタはどうしてサイリュウムを振るのか 〜声優ライブという、「音の色的クオリア」の世界〜

取り留めの無い話を。音と色に関する無駄に長い独り言。

  • 音と色と「色聴」

昔から、「七色の音色」とか喩えられるように、音と色の感覚にはどこか共通点があるようだ。
実際に、音から色そのものを感じる人もいる様だが、それは「色聴」と呼ばれ、「共感覚」などという特殊な感覚らしい。この「色聴」の力をもっている人は、ほぼ絶対音感の持ち主だとか。実際に持つと案外厄介に感じる事もあるらしいが、その様な特殊感覚とは無縁の凡人にとっては、やはり羨ましい。その様な感覚で、音の世界を見てみたいと思ったりもする。
とは言え、そんな特殊感覚が無くても、やはり音から色を連想する事は多いだろう。私は声優が好きで、その声を聞くことに強い関心を持つようになってから随分経つが、最近、その声の感じ方に「色味」が感じられる。もちろん、実際に色が見える訳ではないのだが、年々、声の感覚と、色の感覚が重なるように感じる事が多くなってきている気がする。「感じること」を「クオリア」と呼ぶらしいが、その声のクオリアと色のクオリアが近づいている感じだ。
おそらく、興味を持って聞いていることにより、単なる凡人であっても、少しは声優の声に対する感性が強くなっているのだろう。そして、強い感性が色のクオリアと共振して、そのような感覚が大きくなっているのかも。
「色聴」がどうして起きるのかと、専門知識も無く考えると、おそらく音のクオリアを感じる脳の部分と、色のクオリアを感じる脳の部分が近いかもしくは同じで、上手く処理しきれずに影響しているから、では無いだろうか。音の波を処理して判断する脳と、光の波を処理する脳が近いとか考えられる。幼児期に多く発生するともいうし、それは未発達・未分化であるからと考えれば辻褄が合う。

  • 声優の声の「輝き」

そうして考えてみると、面白いのが声と色の関係性だろう。一般的に、どの声がどの色に感じるものなのか。実際に「色聴」の感覚には共通部分が多いらしい。(ただし、完全には一致しない。)
ちなみに、私が声優の声に強い興味を持つ様になったのは、声優の声に強い「輝き」のようなものを感じたからだと思う。凡人の悲しさ、最初は「音の色」などは感じられず、声優の声に「強い光」のようなものを感じて、それに惹かれるうちに、その「輝きの色」的なものまで感じるようになったというのが正しい。
ただ、この「輝き」は、実はテレビを通してではそれほど強く感じない。イベントなどで、出来るだけ生に近い声を聞くことによって、より強く「輝き」を感じる事ができる。それはやはり「音波」が影響しているからだろう。録音される可聴域範囲以外の音をイベントで受け取る事で、その輝きは鮮明になる。
だから、声優の声の音波については、とても興味がある。彼女らは(もちろん興味を持っているのは女性声優達だ)、一体どのような音波を出しているのだろうか。

  • 声優界の「金銀胴」

輝きのある色とは、つまりはメタリックな輝きの色ともいえる。なので、声優の声は金属の色だと表現しやすい。
例えば、今、声の魅力で最も注目している声優はというと戸松遥なのだが、彼女の声の輝きは、尋常ではない。正に「黄金色の声」。声優界のパバロッティと名付けたいくらいw。
彼女の声は、高音でも低音でもバリバリと強く響く。もちろんそれは声が割れている訳では無いので、繊細な声も出せて、一音ごとの「響き」にメリハリが残る。可聴域を超えた音波を幅広く多く含んでいる為、このような強い輝きが出るのだろうか。彼女の持ち役が、神様や姫様などの「超越者」が多い事も、声質に関係しているだろう。
次に茅原実里。彼女の声は、非常に澄んでいてかつ輝きが有り、それはまるで「月の銀色」だ。時に静寂さを感じさせる声で、まるで水のせせらぎの様にも感じられ、少し青み掛かった色彩も感じさせる。
そして、金銀と来て胴はというと、なぜか水樹奈々の声が思い浮かぶ。別に順位付けという訳ではない。彼女の声は色味が強く一見地味だが、その声幅は、強く鍛えられれば黄金に輝くし、丁寧に伸ばせば銀色の輝きも出す。更に灼熱に熱っせられて真赤に輝く事もある。正に万能の声色だ。
これらの声優は、全て歌声からこのような「色味」を感じている。それはやはり、歌声によって声を張ることにより、声の輝きが増し、その色彩も強く感じやすくなっているからだろう。

  • 声優という「声の七色」

こうして、声優の声の「輝き」を感じる様になり、その「輝きの色彩」に意識が行く様になることによって、声優の声の具体的な色味についても感じてきたのかもしれない。
例えば銀の静寂の色味は青に近い。冷静さ、クールさを感じさせる声は青色を感じる。
黄金は温かみ、暖色に近く、それは人情味でもある。人情味のある声は黄色を感じる。
人情味があり、なおかつ知的さを感じさせる声がある。その人の声はなぜか緑色を感じる。
翻って、温かみから、さらに女性的な魅力を感じさせ、多くの声優が魅力としている、少女の魅力が強ければ、肌色からピンク。
温かみというよりも、信念であり、情念であり、熱さ、強さを感じさせる人の声は、やはり赤色。
また、熱さと強さを持ちつつ、なおかつ成熟した冷静さを持っている人の声は、紫。
そして、色味を感じさせないほど、清廉、清楚な雰囲気の人の声は、白色。
もちろん、一人ひとりの声ごとにその色や輝きは違う。見て判るように、実際には声そのものの感覚という訳ではなく、人格から感じている部分が多いのかもしれないが、不思議な事に、その声優の声そのものがその色で感じられる。
このように、一旦声優の声に色を感じ始めると、その声優の声の世界を色彩豊かに感じてくるのだ。

ところで、よく「アニオタはどうして声優のライブでサイリュウムを振るのか」という非難めいた意見を聞くことがある。
だが、それはやはり、声優ライブに行く者は、声優という声のプロの魅力に強く惹かれているからなのだと思う。声優の声に惹かれ、その感性を研ぎ澄ましている者達が多く集まる場所が、声優ライブだ。彼らは、ただ単に声優の声だけを聞いているのでは無く、声優オタクとして、ラジオなどで声優の性格までも熟知している者達だ。私のような凡人でも感じられるようになった声優の「声の色彩」を、それら猛者達が、無意識的にしろ感じていない訳がない。
声優ライブでは、声優毎にだいたいサイリュウムの色が決まっている。その色は、その声優の名前から由来されているかも知れないし、本人の好きな色からかもしれない。しかし、総合的に、その声優の「声の色」として「はまっている」と、その定着率も圧倒的に良いような気がする。また、曲毎にも色が変わったりする。それは、その歌の声色も、曲毎に変わっているからだろう。
声優ライブに参加している者達そのほとんどが、その音の世界に色彩を感じているとして、それを本当の色彩として表現しようとする事に、何の不思議があるだろうか。そのライブ空間には、声優の声という色的クオリアが存在する。そして、その色的クオリアを受け取っている者としてその色を発することは、声優の声を自身の内面から感じる事であり、つまりは強く深く受け取る事ができる。
アニメオタク、声優オタクという、娯楽に強い関心を持ち、その興味のために努力を惜しまない者達の技として、このような「発見」は正に必然だったのだろう。
私も声優ライブにおけるサイリュウム発展の経緯がわかるくらい長く、この世界で楽しんできたが、その成果として、音に色彩があるという感性が強まった事は、本当に嬉しく思う。この感覚は、今後の様々な面において価値があるだろうから。何事においても色彩豊かな感性を持ちたいものだ。

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