カンピオーネが許せない

アニメの出来はともかくとして、この物語、神話好きとしてはなんとも赦せない。
神話の知識に力があり、それをまつろわぬ神にぶつける事で神威を削るという設定だけれども、これには「三段階」駄目な要素がある。
まず、知識が稚拙。だって、アテナの起源が大地母神だなんて、誰でも知っていることでしょ。少なくとも、ギリシア神話について少しでも興味を持ったら、最初に知ることと言っても良いくらい。そんなトリビアに力が有るとかの設定にするって、「知ってる俺偉い」という作者の厨二心が暴露されてしまう。あー、恥ずかしい。
それに、この設定、根本的におかしくない? アテナ自身「本来の自分を取り戻す」とか言っている。つまり、アテナの行動と、本来の姿を暴露する主人公の行動って、同じことだよね。なのに何故力が削がれたりするの? 例えばアテナが知恵の女神として現代人の信仰を集めているから、その力の源を断つ、とかいう設定ならば納得もいくけれども、別にそんな訳では無いみたいだし。言葉にして神秘性を落とすとかの設定かとも思ったけど、アテナ自身、結構自分の事ベラベラ喋ってるから、それも違うし。なぜアテナ自身不快がっているのか理由が分らん。まったく矛盾している。
これって、例えばFateの「英霊が信仰心を集めている」とか、他の厨二作品の設定から都合の良さそうなところを考えなしに持ってきているから、こんな事になっているんじゃないのかな?
そして最後に、神話好きとしてどうしても許せないのが、こうやって神の原初の姿を、力無いものとして低く見ている、精神性の無さ。
神は、結局人の精神が生み出したものなのだから、その精神性はもっと真剣に考えて欲しい。最初の神が生み出された原初の世界、その自然と一体となった人の心からうまれた神こそ、正に真の神様として、最も力有る存在だろう。「大人数が知ってる神の姿が偉い」とかのミーハー思考で安易に設定をこねくり回しているのって、実に浅い。こういう設定の物語を作るくらいだから、神話とか好きで研究して作っているかと期待してしまうのだけれども、全くシンパシーを感じられず、残念でならない。(因みに、Fateは聖杯が悪意ある人の意思によって造られているから、あれで成立しているんだよね。というか伏線ですらある。)
小倉唯の舌っ足らずロリ声に癒されてなければ、切るところだよ。声優たちに感謝。最近のラノベは、質が悪いのはトコトン悪いからあまり期待できないけど、これから軌道修正していくか、一縷の望みを持って見ていくしかない。

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