「ゆる部アニメ」に注目する

ここでいう「ゆる部」の定義は
1.部活の目的がゆるい
2.その為、弱小である
3.しかし、何故か男女混成
例えば、しっかりした運動部などではなく、部活動も曖昧ならば物語をどの方角にも転がす事が可能。亜流としては、生徒会なども主体的な目的を持たない団体として描けるので、これに含まれたりする。
弱小として仲間意識を描く事が容易だし、主要キャラも少ないのでキャラを立たせることが出来る。
そして、男女がその部を理由に一緒にいるので、恋愛にも出来るし、逆にしなくても良い。幼馴染の淡い恋心的なものをいくらでも描ける。
こういった「ゆる部」を物語のメインに据えたアニメ作品が、結構最近目立ってきている気がする。
特に今期は「TARI TARI」と「ココロコネクト」という、明らかな「ゆる部アニメ」の出来が良いので、その認識が強い。前期から続いている「氷菓」も、同様に良い作品だろう。
これらの作品の調子が良い理由は上記のとおりだが、なぜ、今このタイミングでこれらの作品が目立ってきたのか、というと少し謎だ。
イメージとして、このゆる部アニメでもっとも有名なのは、やはり「涼宮ハルヒの憂鬱」のSOS団だろう。オタク文化が広く世間に知れ渡った時期の代表作であり、このSOS団こそがオタク的学生生活の、一種の「憧れ」的意味合いすら持っていた。以降これをモデルとした類型作もいくつか作られているように思う。とは言え、この「ゆる部」的な作品は以前からあり、例えば「げんしけん」とかもそうだろうし、「氷菓」だって、原作としてはハルヒより前から書かれている。「ゆる部」=所謂、学校生活において、単に友達としてでは無く、それ以外のなにかの口実でゆるく集まれる集団という設定は、いつの時代においても魅力があるのだろう。
ただ、例えば「けいおん」や「ゆるゆり」のような人気作が女の子ばかりの世界であったり、「はがない」や、「ましろ色」などの美少女ゲーム系にも「ゆる部」的なものが登場するが、本質的にはハーレムものであったりしたのに対し、「TARI TARI」「ココロコネクト」などは、男女比がある程度対等で、明らかに違ったイメージがある。言ってみれば、男も女も楽しめる作品を目指している気がする。
この男女比に対する意識は、男オタクの夢を具現化する「オタク作品」というよりも、例えは古いが「男女7人夏物語」的な、トレンディードラマ的、一般志向なものを目指しているように思う。オタクコンテンツの中で言うと、より一般層を意識して作られているゲームの中の、RPGユニットを見ているかのようだ。
思うに、結局アニメは、オタク文化の中でも最も影響力の大きなコンテンツにも係わらず、最も閉鎖的意識の強いコンテンツなのではないだろうか。だから未だに、エロオタク作品こそが売れるとばかりに、そのような紳士御用達「見え消しアニメ」が氾濫している。
しかし最近では、そんなアニメコンテンツでも結構一般層が興味を持つ機会があり、一旦一般層に広く興味を持たれれば、大ヒットが望めるという事に作り手も気付き始めているのだろう。
もしかしたら、この状況を作った一つのきっかけとして、「はがない」の失速と「あの花」のヒット、などが影響しているかもしれない。
考えてみれは、「ゆる部」とは少し違うが、この少し前にヒットした「あの花」にも「超平和バスターズ」というグループがあった。よりオタクの枠を超えたヒットを求めるには、「はがない」的ではなく、一般層にもアピールできる「あの花」的なものを作るべきという認識が広がりつつあるのかもしれない。
それは、誰もが楽しめる、どこに出しても恥ずかしくない作品、と言えるかもしれない。そういった作品が増え、世間的に「アニメはオタク的でどこか恥ずかしい」という認識が払拭されるとすれば、それはそれで良い事かもしれない。
・・・しかし、今後このような流れが加速するのだとすれば、私のような生粋のオタクとしてみれば、どこか寂しい心持ちだったりする。