レアキャラ、ウィスパーボイス声優について、いろいろ語る

結局、「声質」などというものを形作るのは、その人の「意志」によるものなのだと思う。
そうでなければ、「声帯模写」などという芸が成立するはずが無い。もちろん、声帯そのものに個人差はあるだろうが、例えば、喉声鼻声、高め低めなど、「声質」の大部分を決定するのは「声の出し方」であり、その人の意志とか癖があってこそ決まっているはず。人は生まれてからの環境の中で、どんな声を出したいか、どんな声が出しやすいかを感覚的に決めてしまって、自分なりの「出し方」を固定化し、その結果声質が決まっているのだと思う。

  • 声としての非効率性

ということで、声優においてウィスパーボイスと呼ばれる人がいるが、それも有る意味、自身の意志によって出しているはずだ。実際に、普段そのように認識されていない声優であっても、ある程度のウィスパーボイスを出す事はあるだろう。
しかし、それでもウィスパーボイスを武器にする声優は、どこと無く特別な雰囲気がある。例えば、その代表とも言える能登麻美子。彼女の声は誰が聞いても独特な響きがある様に感じるし、彼女の存在自体が、独特な気配すら感じさせる。
思うに、ウィスパーボイスは、非常に非効率な声の出し方だと思う。ただ小声を出すだけならば誰でも出来る。ウィスパーボイスの凄みは、その声帯を使った本来の声以外の、声そのものに含まれている「雑音」にある。それは、おそらく喉を空気が通る時の反響音。まるで天然のホワイトノイズのようなものが声の中に多分に含まれていることで、特別な声に聞こえる。
これは、声帯を効率良く「使わず」、無駄に喉に空気を通すことによって発生するものだろう。実に非効率的だ。おそらく、この声は訓練すればある程度は誰でも出来るかも知れない。しかし、その非効率的な声を出し続ける事に意義を見出す場面は少ないだろうし、ましてや、声優として一キャラに使い続けるというのは、かなりの困難を伴うと思う。

  • 声優としての特殊性

こう考えてみると、この声を本来から自分の地声として使っている声優というものが、そう沢山いるとはおもえない。なぜならば、声優とは当然の事ながら声を出す仕事であり、それはつまり、効率的な声の出し方、声の使いまわしを得意とする人こそが、その自分の声に自信を持ち、志すはずだろうから。
なので、地声でウィスパーボイスを持ち、それを自身の強みとしている声優は、やはり声優として非常にレアではないかと思えるし、実際にそう多くは無いと思う。
まず、思い浮かぶのは、能登麻美子。他に有名どころでは、皆口裕子とか、丹下桜など。初期の沢城みゆきも、実はそんな感じだっただろう。花澤花菜もウィスパーボイスとして有名だし、豊崎愛生も結構駆使していたりする。最近では、やはり小倉唯を挙げることが出来るだろう。しかし、声優全体からすると、決して多くは無い。
こうやって挙げてみると、結構ロリータ声としても認識されている声優と被っていたりもする。これはつまり、子供が声の出し方が下手で、無駄に空気を使っている出し方をするからかもしれない。いや、もしくはウィスパーボイスには、人の保護欲をかきたてる何かがあり、それを本能として子供が使っているという事もいえるだろう。
なんにしても、声の未成熟性とも言え、それは声のプロである声優とは相反するものといえる。

  • 歌声としての価値

ところで、こういった特殊な声の性質は、その声の魅力を最大限引き出そうとする「歌声」において、より特徴付けられるように思う。つまり、普段はそれほどウィスパーボイスを認識されていない声優であっても、歌を歌う時には、そのウィスパーボイスとしての魅力を自分の一番良い声として特徴付けて歌うことがある。
例えば沢城みゆき。彼女は最近あまり歌を歌わないが、彼女のデビューキャラであるぷちこは正にウィスパーソングであり、その特殊性はかなりのものだった。また、スフィアの豊崎愛生、彼女の声も、歌声になった時は、言ってみれば「ホワイトノイズ度」がより高まっているように思う。もちろん、能登麻美子や花澤花菜、小倉唯もそうだ。
こうやって考えてみると、彼女達は声優ユニットとしてグループで歌を歌う機会が結構あったりする。その際、やはりその声の特殊性は、そのユニットにおいて価値のあるものだろう。なぜならば、やはりアイドルソング的にはユニゾンが基本だし、そのただ同じ音を併せるだけの中に、全く異質な声として含まれることは、それがまるでアンサンブルのキーボードのように、全体の音を包み込み幅を広げるような効果となっているだろうから。

  • ウィスパーボイス礼賛

たまに、ウィスパーボイスの声優に対して、演技が下手という声が聞こえてきたりする。例えば、昔の沢城みゆきなども案外そんな風に言われていたように思う。しかし、彼女は地声そのものが変わるほどの鍛錬によって、今では演技派声優の筆頭とすら言われるほどの存在になったのでは無いだろうか。逆に、昔の彼女にあった天然のウィスパーボイスの様なものが今の彼女に出せるのかというと、またそれは、若干不安だったりもする。
前述したように、ウィスパーボイスの本質は、非効率な声というところにあるだろう。だから、その声を駆使して、普通の滑舌の良さとか、セリフの言い回しを求めるというのは、あまり意味が無いのではないかと思っている。ウィスパーボイスには、ウィスパーボイスにこそ価値があり、普通のアニメ声的な分りやすさなどは不要だろう。
声優の仕事は、いかに視聴者を楽しませてくれるか、その一点に尽きる。ウィスパーボイス声優は、その声質そのものを心置きなく発揮してくれて、こちらを「蕩けさせて」くれれば、それだけで充分と思っている。これからも、こういった特別な才能をこそ、大切にしていきたいものだ。
結論:小倉唯かわいいよ、小倉唯

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