耳としっぽに癒される(*^o^*) 〜上質なファンタジーとしての DOG DAYS’〜

  • 「幸福な戦争」がある世界

最近、DOG DAYS’がかなり気に入ってきている。
この作品、主人公シンクが異世界フロニャルドに勇者として召喚されるという、実によくあるファンタジーなのだけれども、そのフロニャルドで勇者として戦う戦争が「単なるゲーム」という部分が、有る意味斬新。
「無印」を初めて見たときは、「スリルの無い戦争を描いて何が楽しいの?」とか思いもしたのだけれども、見続けているうちに、徹底した「楽しい雰囲気作り」に、感心するようにすらなっていた。
スリルは確かに無いかもしれない。けれども、フロニャルドにおいてゲームのような戦争を楽しく体験する、耳しっぽ少女達とじゃれ合う、勇者として尊敬される、という正に願望充足だけで構成された作りは、清々しいほどのエンターティメントぶりだ。気が付いたらその作品世界に浸っていて、充分楽しんでいた。
そして第2期「ダッシュ」に入って、このフロニャルドへの「没入度」が、より高まっている。
その理由として、ダッシュにおいてフロニャルドの描かれ方が、「ローファンタジー」から「ハイファンタジー」になりつつあるからではないかと感じている。

  • ローファンタジーとしての「無印」

前「無印」において、主人公がフロニャルドに召喚されたとき、そのフロニャルドは有る意味「現実世界の引き写し」という要素が多く含まれていた。
つまり、主人公シンクはアスレチックを得意とする少年で、その彼が呼ばれたのが、アスレチックを戦争とする社会で構成されたフロニャルド。シンクは現実世界のアスレチック大会で優勝出来ず、それが心に引っかかっていたけれども、フロニャルドでは勇者として心置きなく大活躍をすることになる。
また、フロニャルドに召喚されたのがシンクだけであった事も大きい。フロニャルドはシンクの心の中にだけある世界と捉える事も出来て、その心の中のファンタジー世界で、シンクは自身の心の有りようを見直す事にもなっていた。
これは、言ってみれば「心」という内面世界を描いているファンタジーという側面があり、「心という現実」を形を変えて描く、ローファンタジーという言い方が出来るだろう。

しかし、ダッシュでは少し趣が違ってきている。勇者として召喚されている現実世界人は3人。この世界を単純に一人の心の中の世界と位置づける事は出来ない。
そして、物語の描かれ方も、微妙に違ってきている。無印では、やはりシンクを中心に物語が廻っていたのだけれども、ダッシュでは勇者も三人居るし、シンクにのみこだわる必要が無い。その為なのか、三人の勇者のみならず、その他の多くのフロニャルド人にも物語の焦点が当たってきている。
特に特徴的なのが、フロニャルドに残っていたという「勇者王アデル」。彼女は、当時の魔王や騎士などとパーティーを組み、このフロニャルドで古から活躍していたらしい。彼女らの活躍は、有る意味シンク達の活躍とはまったく関係なく、関係するといえば、この「フロニャルド世界そのものと係わりあう者達」と言えるだろう。
つまり、このフロニャルドという世界は、勇者王アデルとその仲間達によって維持されてきた、現実世界とは全く独立したファンタジー世界であることが、彼女達の存在によって示されているといえる。
現実と直接的な係わりを持たないハイファンタジーとして、フロニャルド叙事詩が語られている。そう感じられたとき、DOG DAYSという物語は、ハイファンタジー、エピックファンタジーとしての、深い広がりを感じる事ができるだろう。

とは言え、実は「ダッシュ」においても、ローファンタジーとしての構造が全くなくなっているわけではない。それはレベッカの立場に現れている。
レベッカは三人の勇者の中で、唯一人アスレチックとは無縁の存在。彼女にとって、シンクは友達以上の関係だけれども、シンクには、アスレチックを通じて親しくしている七海という存在も居る。レベッカは、自分をシンクの恋人として相応しくないと思っているのか、自身の恋心を封じ込めている。
そんな状況の中召喚されたフロニャルドで、彼女はシンクのアスレチックの力以上の「魔法少女」wの力を手に入れる。そして、シンク、七海が一国の勇者となっているのに対抗できる三国目の勇者として活躍することになる。
この三国の構造こそ、正にレベッカの心の中の、恋の三角関係の引き写しだろう。
そして、物語の中で、レベッカは勇者としての地位を築くと共に、シンクがフロニャルドで最も親しくしているミルヒ王女に促され、自分の心の中の想いと対面していく様子が描かれている。
・・・
エピックファンタジーとして物語世界に深みが増し、また、恋愛模様がファンタジー世界の暗喩的描写として描かれている。
最近は、DOG DAYS’を、ただ「楽しい雰囲気作り」だけの作品ではなく、結構上質なファンタジーとして捉える事ができるのではないかと、感心しながら見ていたりする。
・・・いや、ただ単に、耳しっぽ少女達のちょいエロ描写だけでも、充分楽しんでいるんだけどねw。

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