アニメブームが終っている、という感覚

どうも最近、その想いに取り付かれている。
アニメブームなど、一体いつ始まったものを指してるんだ?という指摘もあるかもしれないけれども、それは結構長くつづいていたものと認識していて、つまり、エヴァのヒットからこっち、アニメオタク業界が浮かれていた、ブームと呼べるものだったと思っている。
けれども、それが本当に終ってしまっている、という感覚がある。
未だにアニメタイトルは沢山有る。ヒットと呼べる作品も幾つか出ている。だから、まだまだこのまま続くはず。そうも思いたい。
しかし、どうも世間を見回してみると、どこか、不気味な静けさが有る。
どこの産業でも、一度市場が拡大すれば、ある程度の生産は続けなくてはならないだろう。また、それを受け入れる受け手の存在もある程度は残っているはず。だから、ある程度の売り上げも続いている。
それに、ある程度出来の良い、話題になった作品が売り上げを伸ばし、ヒットと言えるものにもなるかもしれない。話題となった良い商品に客が飛びつくのは、どこの市場でも同じ事が言える。
ただ、それだけでブームが続いている、アニメ・オタク市場が浮かれているとは、到底思えない。
ブームとは、市場の中の受け手の心に「熱」があり、そこから常に新たな価値が発信されている状態を指すのでは無いだろうか。単なる話題性とか惰性とかではなく、客側が自身の心に従い、良い作品を見出したり、新しい価値観を創造していくことがなければ、そこに熱は生まれない。
そういった熱が無ければ、それは単なる日常の消費行為の一環でしかない。つまりブームとは呼べない。
思うに、やはりあの「ステマ事件」が尾を引いているのだろうと思う。というか、ステマなど以前から存在していた事だし、それがあの時、何故あれほどの大問題としてクローズアップされたのかということに本質があるだろう。それは、客の方が、ステマを理由にオタク市場から撤退したいという心理の表れだったのかも知れない。
例えば、一人のオタクに、昨今の不況による財政的な理由とか、長く続けた事による年齢的な理由とかで、「これ以上オタク文化に金を出したくない」という気持ちが隠れてあったとする。
それは、今までオタク文化を大切なものとして金を出し続けて来た者にとっては、何か理由がないとなかなか行動に移し辛い。しかし、「騙されていた」という理由を与えられた事で、「止めてもよいんだ」「止めなきゃ馬鹿だ」という気持ちに簡単に移ってしまう。自分の行動を正当化する理由として、このステマ問題が都合が良いからこそ、あれだけ騒がれたのではないかと思える。
そして、ステマ問題は、前述した「ブームの要件」に、直接的にも影響を与える。つまり、ブームの発信元であるオピニオンリーダーとも言える人が、ステマ問題によって口を封じられてしまった。受け手の方も信じなくなってしまった。その為、作品の良さとか新たな価値観とかが発生・伝播し辛くなっている、という事もあるだろう。
今、世間で作られている沢山のアニメ作品を見回してみる。すると、とても好い出来なのに話題になっていないものがあまりにも多い気がする。例え有る程度話題になったとしても、売り上げ的に伸び悩んでいるとか。
表面に見える、産出量の多さとか、話題となって大きく売れた1・2本のヒット作とかの裏で、話題的にも売り上げ的にも正しく評価されないままの作品が沢山発生しているとすれば、その市場には未来は無いだろう。
今まさに、そんな未来の鳥羽口に来ているような気がしてならない。