今、熾烈なる「堀江由衣後継者争い」

先日、戸松遥の事件について書いた記事で、つい、声優ファンの立場としてはあまり好ましくない事を書いてしまった気がする。つまり、「堀江由衣の後継者問題」など、どの声優がどの声優より人気が上か的な。
こういう事って、声優ファン同士の暗黙の紳士協定的な意味で、ネット上ではタブーとされている気もするのだけれども、毒を食らわば皿まで的にあえて書きたくなった。まあ、狭い視野の偏ったダメ声オタの戯言として、読み飛ばしてくれると嬉しい。

まずは状況確認。
事の始まりとしては、エヴァブームから。スタチャ王国が勃興し、林原閣下が全てを牛耳っていた時代。アニメ、声優という産業がより大きくなって、世間一般から注目を集めた始めた時代の幕開けだ。
その閣下が自ら地位を禅譲した時、その後のポジションに収まったのが堀江由衣だった・・・、というのは、偉大な閣下を敬愛する真面目な声優ファンは受け入れ難いかもしれないけれども、実際にはそうだっただろう。
エヴァより前にあったアイドル声優ブームの流れが、エヴァによって広がった市場によって飽和し途切れかけたとき、堀江由衣を中核とする新たなアイドル声優ブームがもたらされ始めた。堀江由衣は、決して閣下のように演技とか歌とかトークの上手さを強くアピールする存在ではなかったけれども、声の可愛らしさを最大の武器にしつつそれらを十全に持ち合わせていて、アイドル声優としての地位を盤石のものとした。そして気が付けば、トップアイドル声優となっていた。

トップアイドル声優とは、その時代の特別な作品のヒロインを数多く演じつつ、その作品の主題歌を自ら歌う存在。これは、声、演技、ルックス、人格的にも人気があって多くの作品のヒロインを演じ、歌が上手くてその主題歌を任されるほど作品から求められ、そして、その幾つかが大ヒットするほどの作品になるような声優でなければならない。
多くの作品のヒロインを演じる人気声優ならば、ある程度存在する。しかし、そこに歌うアイドルという要素を組み込むと、その二つの要素を両立するのは極端に難しくなる。例えば、川澄綾子釘宮理恵能登麻美子などは人気声優として確かなものを持っているが、アイドルというところにはいかなかった。
逆に、ある意味堀江由衣よりも成功しているともいえる存在として、水樹奈々田村ゆかりが居るが(あ、このあたりからかなり危険な事書くことになるなあ^^;)、この二人の成功は、歌手活動に依る部分がかなり大きい。もちろん、人気声優でもあるので沢山のヒロインを演じてはいるけれども、「時代を代表する作品のメインヒロインを演じた」と言えるのは、かなり限られた作品のみ(ぶっちゃけ、二人とも「なのは」が大きい)。水樹奈々は演技に依りすぎるところ、田村ゆかりは声が特徴的すぎるところから、王道的ヒロインキャラを演じる機会が狭いと思うのだがどうだろうか。他にも、坂本真綾という存在も大きいが、彼女もアーティストという地位を確保し、アイドル声優というカテゴリーには入らなかった。
時代から広く求められる注目作、いわばトップ企画に迎えられるアイドル声優はどうしても限られる。その役を多く任されつつ、自身も人気があり、歌も歌えるアイドル声優として誰からも認められる者こそトップアイドル声優であり、そう言える存在は、結局、堀江由衣をおいて他にいなかったと言える。

  • 群雄割拠の時代

しかし、そんな堀江由衣にして、時代とともにヒロイン役を演じる機会はどうしても減ってくる。最近ではサブヒロイン的役回りを多く演じ、若手声優のサポート的な活動が多いくらいだ。
閣下の禅譲からすでに10年。堀江由衣ならずとも、田村ゆかり水樹奈々の人気も、業界内では既に臨界地点に近づきつつある。
そうなってくると、市場には新たな存在を求める間隙が生まれる。ファンの年齢層が入れ替わり、時代が入れ替わる。そして、それは声優ユニット「スフィア」の大ブレイクなどから、明らかになっていった。
業界は、そこに大きな市場がある事を見て取ったのだろう。2012年初頭のアイドル声優のデビュー合戦はその結果ともいえるが、その前後も含めて、今では沢山の新たなアイドル声優が活動を開始している。
正に、今はアイドル声優群雄割拠の時代という訳だ。

しかし、そんな中でも「トップアイドル声優」は限られてくる。その座に収まる者、つまり堀江由衣の後継者争いは、非常に熾烈なものと言える。
・・・次からは、具体的に、現在の各候補者について、歯に衣着せぬ事を書いてみたい。ほんと、完全な趣味&独断だから見逃してw。
伊藤かな恵
数多くのメインヒロインに迎えられている上、歌も歌うなど、アイドル声優の条件はクリアしているにも関わらず、本人は全く野心無し? 既に中堅どころだが、ヒロイン=主題歌は決して多くは無く、このままアイドル活動からフェイドアウトするつもりかもと、最近やきもきしている。
喜多村英梨
若干サブヒロイン寄りのキャラを演じる機会が多いが、その役の幅が広い上、歌唱力には定評がある。アーティストとしての存在感がより増していて、若年層からの支持も厚い。ただ、自身がオタクキャラ、ダーティな役回りを自認しているので、結局、アーティスト活動の線を残しつつ、堅実な声優活動を持続、という流れになるかも。
戸松遥
一般層からはあの花のあなる、コアファンからはSAOのアスナで絶大な人気を得ている上、SAOや少女漫画系怪物くんでもヒロイン=主題歌を成功させ、今最も熱い存在。「アイドル声優は若さが本人人気につながらない」という事があるが、その弱点も時が解決する時期にきている。本人人気をより広められるかが、今後のカギ。それだけに、事務所のギクシャクした体制が少し心配だ。
ちなみに、その他のスフィアメンバーも可能性は無くないが、今は胎動時期と言えるだろう。
花澤香菜
既にして、人気ヒロイン声優の生ける伝説。本人人気もかなり高く、その結果としてデビューを求められたという経緯なのか、本人に「祭り上げられている感」が漂うw。ある意味、非常に正統的なアイドル声優。今後、ヒロイン=主題歌実績を積み重ね、お仕着せ感の無い独自のアイドル路線を見いだせれば、より大きな存在になり得るだろう。決定している初ライブに期待が高まる。
竹達彩奈
けいおん、俺妹二発の人気は大きく、本人人気もかなり高い。ただ、ソロデビューが最近で、ヒロイン=主題歌実績が無いのが現状。アーティスト活動では実績を残しており、人気の伸びしろも感じさせる。後は、もっとメインヒロインに野心を持ったり、ソロライブをしたりして王道路線を進んでくれれば、かなり大きな可能性を感じる。
悠木碧
歳若くしてアワードを獲得するなど、まどマギ知名度は十分。また、「アイドル声優は若さが本人人気につながらない」という中、かなりの頑張りをみせている。とは言え、ソロデビューから短く、ヒロイン=主題歌はもう少しかかりそう。急ぎすぎている気がしなくもないが、声優の実力と実績は十分なので、今後の可能性は高い。
小倉唯
その存在自体が十分アイドル的。その上でヒロインたり得る独特な声質を持つことから、細い線ながらもヒロインを獲得してヒロイン=主題歌の実績を重ね始めている。まだJKで「アイドル声優は若さが本人人気につながらない」の呪いwは付きまとうが、時代の価値観を変えるポテンシャルを持ち得れば、早い時期の展開の可能性はあるかも。
小松未可子
結論から言えば、彼女の少年声はヒロイン声優的ではない。つまり、王道のアイドル声優とは違う。とは言え、その声優の実力とライブパフォーマンスとアグレッシブな活動は、アイドル声優としての可能性を強く秘めている。アーティスト系の展開がありつつ、時代の変化から、もっと別の展開があるかもしれない。
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勢いと実績で戸松が抜け出し気味だが、地力で花澤が着実に着いて行きつつ、竹達もダッシュの可能性を大いに秘めている、といったところ。
かな恵は少しおよび腰で、キタエリは別路線で着実に出てくるか。他も、少し時間をかければ十分ひっくりかえせる存在とか。
数年後という意味では、ここに書かなかった既にスタートラインにいる存在も否定できない。例えば、まだ一発目でしかない三澤紗千香上坂すみれなどの可能性もあれば、既に実績がある井口裕香もデビューして今後の展開に期待がかかる。今後の予定の三森すずこも同様だ。実績という意味では、キャラソンでデビュー済みの金元寿子とか、仮想アイドルデビューしている東山奈央も可能性を残している。
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実際には、ヒロイン獲得率は事務所の力による所が大きいとか、声優の実力よりも人気によるアイドル声優なんて無意味だとか、こういった話には別な雑音が多い気もする。
しかし、アイドル声優という存在自体は魅力的だと思うし、その魅力や可能性を、ただ感じたままに残したいという欲求で書いていたりする。
蒙昧をお笑いいただいて構わないし、不快に思った方にもお許しいただきたいものだ。