危機的なプリティーリズム・レインボーライブ 〜プリリズ、アイカツヒロインのスター性をビギナーズラック描写から解析する〜 

レインボーライブの調子が良くない。いや、作品として面白いことは面白いのだけれども、主人公側のキャラが上手く立ってなくヒロイン性を感じられない。下手をすると、物語構成として致命的な欠陥があるのではないかと思えるレベルだ。
キャラ立ては最初のインパクトで決まってくる。そのキャラがどんなキャラなのかを表現する為に、プリリズやアイカツでは「ビギナーズラック」で描写しているケースが多い。なのでその「ビギナーズラック描写」の面から今までのプリリズシリーズとアイカツ!のヒロインを例に挙げて解析してみたい。

  • 幸運を勝ち取る才能 〜いちご〜

まずはアイカツ!のヒロインいちごについて。彼女もビギナーズラックの描写があった。いちごはスターライト学園の入学試験でいきなりスペシャルアピールを出してしまうのだ。アニメアイカツの世界観は結構シビアだ。才能や努力の積み重ねによる実力のみが評価に繋がる。いちごのスペシャルアピールは、正にビギナーズラックであったと言えるだろう。
しかし、このいちごのビギナーズラックには実は十分な理由があることが、その後のいちごのキャラ造形で説明されている。いちごは何事にも躊躇せず挑戦する「とりあえずやってみる」性格だった。その上、一度こうと決めたら突き進む性格でもあることも分かってくる。今まで弁当屋の娘として目標を定めていなかった彼女が、アイドルになるという強い目標を見付けて突き進み始めた。そんな才能爆発の最初の関門として、ビギナーズラックは必然だったと言えるかもしれない。
とは言え、それはビギナーズラックであるために、その後のいちごは失敗もする。結局は努力によって才能を開花させていくことに変わりはない。しかし、そんな努力もいちごにとっての得意分野として突き進む。正にアイドルの才能と言えるだろう。

  • 未来を見つめる才能 〜みあ〜

次に、プリリズ・ディアマイのヒロイン「みあ」はと言うと、彼女にビギナーズラックは無かった。彼女は、最初は何一つ技を出すことが出来ないキャラとして描かれている。
しかし、みあの場合はそれでよいのだろう。彼女は「現在の自分」に足りていない部分がある事を知っている。彼女の能力は全て平均的で、地方では1番であっても中央では至らない。けれども、彼女は「未来の自分」なら誰にも負けないという自負を持って突き進む。それがみあというキャラの強さだろう。正に「ディアマイフューチャー」の名にふさわしいヒロイン像と言える。

  • 世界に愛された少女 〜あいら〜

プリリズ・オーロラドリームのあいらについて。結論から言うと、あいらも実はビギナーズラックは無かった。
あいらは元々ドジで運動音痴の一見普通の女の子だが、偶然出会ったプリズムショーにいきなり参加して、いきなりプリズムジャンプを決めてしまう。しかし、これはビギナーズラックではない。
このプリティーリズムという世界ではプリズムショーの能力は運動能力等では決まらない。おそらく最も大切な才能が「ファション」として設定されている世界だろう。あいらは衣装に愛された少女として、プリズムショーの世界でその才能を開花していく。彼女は最初に登場した時からファッションに対して人一倍情熱を持っている事が描かれている。ファッションの素養は母親譲りであり、その環境でファッション面の才能を磨き続けていた。正にプリティーリズムの世界に愛され生まれ育った少女だ。
その強さはある意味誰をも寄せ付けない強さと言える。彼女がその気になれば、いつでも無敵に成りえる。なので、彼女の人としての弱さは他人と争えないという精神面にのみ現れる。正にあいらはこのファッション=プリズムストーンが全てを決めるプリティーリズム世界の象徴、世界の守護女神的な存在といえるかもしれない。

  • 奇跡を貰った少女 〜なる〜

そして、プリリズ・レインボーライブの「なる」なのだが、彼女の場合はビギナーズラックと言えるのだろうか。
彼女も初めてのステージでいきなりプリズムライブが出来てしまう。これはもしかしたらあいらを模しているかもしれない。第二シリーズのみあで精神的に強い少女をヒロインにしたものの、第三シリーズではやはり初代ヒロインの魅力を復活させたかったとか。
しかし、あいらとなるでは大きく違う点がある。というのも、技の完成になる自身の素質が関係しているか不明だからだ。なるはペアともという妖精もどきに気に入られて技が出来てしまったようだが、そこになるの能力が関係しているかは不明であり、それは20話を超えた今でも明らかになっていない。
彼女は若干恵まれた家庭環境から豊かな感性を持っているようだが、それが飛びぬけた才能であることはどこにも表現されていない。いわゆる普通の女の子でしかない。ならば、プリズムショーに強い思い入れを持って努力に励んでいるかと言うと、そういう行動も無い。ただ、なんとなく少し豊かな感性で思い付きを表現し、ペアともの恩寵であるプリズムライブを披露することで他よりも魅力的なプリズムショーが出来ていると言う状況だ。
例えば20話の彼女が思い付いた「コールアンドレスポンス」などは、ライブでやるのは誰でも思いつく。しかし本来演技を競うプリズムショーでやってよい事かというと外部の力を借りる駄目な行為だろう。エキシビション的な今回の発想としては有りだろうが、本来のプリズムショーでは邪道でしかない。そして、プリズムライブのセッションも全く当たり前の発想で、共演するなら今まで思い至らなかった理由を知りたいくらいだ。物語上とても盛り上がっているように演出されているが、その実、平凡な発想にプリズムライブの力を借りた状況でしかないように思う。
なるの貰った力は、どうやらペアともと心が通じ合うことによってペアともの住むプリズムワールドから届く不思議なエネルギーのように思う。云わば、全くの魔法であり、なる達主人公の能力や努力とは直接関係しない。
ならば、なるはプリズムライブという魔法を授かった、一種の魔法少女なのか。
そのような魔法を手に入れた魔法少女を一人知っている。それは「クリィミーマミ」いや森沢優だ。彼女は望まずして魔法の力でアイドルになってしまい、一旦はアイドルになる事を楽しみつつも最終的にはアイドルである自分を拒否して自分を取り戻した。
そう、与えられた魔法の力は結局自分の力ではない。それを行使して世界に出ようとしても何時かはしっぺ返しを喰う。それは魔法少女であれば誰もが最後に思い知る事実だ。
しかし、レインボーライブは今までのところ魔法の力を肯定的に捉えている様にしか見えない。このままでは物語上致命的な欠陥が生じるのではないかと思わずにはいられない。
今となっては、主人公側のなる達よりもエーベルローズ側のべる様達の方に思い入れが強い。(だからこそ楽しんで見られているくらいだ)しかし、プリズムライブという「邪悪な魔法(w)」は現実を浸食し、プリズムショーの世界に進出しつつある。あの努力によって自らを律し続けた気高いべる様が、そのような悪の波に飲み込まれ変質していく様子を想像するに、悲しくて仕方が無い。
今後、プリティーリズム・レインボーライブがどのような方向に向かうのか、気になって仕方が無い。