アイドルファンとアイドル声優ファンの差について

ヤフーニュースにこんな記事が出ていた。

  • アイドルファンと声優ファンはなぜ衝突? 溝を埋めるカギはあるのか

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20131207-00010004-realsound-ent
個人的には正に今一番気にしている事だけれども、こんな記事が一般化していること自体に驚きを禁じ得ない。
この記事では溝をクローズアップしているけれども、実を云えば、最近、若い世代でアイドルファンと声優ファンの溝が埋まりつつあるという感覚はある。
その感覚の発端は、ラブライブから。ラブライブのファンて、若い世代で、一般化していて、サイレントマジョリティが多くを占めている。LINEやSNSで顔を出すけれども、自身は一般消費者だと思っているから、無駄な自己主張とかしない。つまり、こんなブログとかで得意げに感想とか書かないw。まあ、新しい世代のオタクなのだろうけれども、自身の拘りより繋がりを大切にする者は、もうオタクと言えない気もする。
一昔前に、一番のユーザーであるオタクの意見が最も価値のあるものとして、それを形にする方法が賢いと、クリエイターやメディア主導からオタク主導に切り替わる時期があった。特にメディア意見の凋落はかなり大きかった。しかし、今はそんな意見するオタクが主導できる状況ですらない。主張しないアニメユーザーが大量に存在していて、しかし、以前に比べてネットでそれらの動向がどことなく読み取れるから、結局そのユーザー動向をメディアが追い掛けている。論壇不在のまま、ビックデータに踊らされる、正に消費だけが正当化される文化に成りつつある気がする。それが悪い事じゃないけどね。
まあ、オタクの動向はそんな感じなのだけれども、そうなると、歴史や実績や実力はかなり無視されて、目の前の成果だけを認める傾向のファンは多くなる。
そして、アイドルシーンに比べてよりオタク的で閉鎖的であったアニメ・声優シーンが、今では一般化しているということからすると、アイドルと声優の差みたいなものは無くても良いんじゃないという感覚は、昔に比べて非常に広く行き渡っていると思える。特に、ラブライブで広がった世代的には、その意向が強いんじゃないかな。
しかし、やはりアイドルオタクと声優オタクの差は、根本的なところでどうしても残ると思う。両者の違いは、何を第一としているかと言う事。
アイドルはもちろん自身の売り出しを第一にしている。それを尊いものだとファンも認めている。
しかし、声優アイドルは自身の売り出しを第一にしてはいけないという枷がある。なぜならば声優とは作品の裏方である声の仕事こそが本分だから。
アイドルとは、本来的に「人から求められる」事こそが本分であって、自身の主張は二の次だったりする。逆に言えば「自身の主張」が「人から求められる」ものであることがアイドルとも言える。
その点、声優は「自身の主張」の大部分を「アニメ作品」「キャラの魅力」に仮託している事実があり、そこにファンが惹かれている。だから、その「アニメ作品」「キャラの魅力」を理解しているアイドル声優こそ人気が集まるもの。少なくとも、その部分を「理解していない」と思われることだけは無い人格でなくてはならない。それって、実は普通のアイドルのように奔放に自己主張していると、いつかコンフリクトしてしまう部分だったりする。
このコンフリクトに耐えられるかどうかが、アイドルファンか声優ファンかの境目だろう。
例えば、生粋の声優であり、バーチャルアイドル中川かのんとして「アイドルを演じている」東山奈央は、当然声優ファンから受け入れられる。
アイドルとしての活動が長いけれども、自身は声優であることを自覚し、アイドルとしての自己主張でも声優部分の透明性を維持し続けたゆいかおりも、やはり声優ファンから受け入れられていると言えるだろう。
しかし、人気作に参加した元アイドル、元アーティスト的経歴の者や、新人アイドル声優として自身は声優だと思っていても、昨今のアイドルと同じ活動をし続けてアイドル声優の特異性に気づけない者がいた場合、それを声優ファンが受け入れられるかどうかは微妙かもしれない。つまり、そこにはどうしても溝は生じるだろう。
ファンの好きなものに対する想いは真摯なものだ。その対象が違う以上、そこにはどうしても差が生じる。後は、その差が溝となるか、良き隣人として受け入れられるかという事なのだろう。
互いが、溝を感じずに接近している今こそ、そんな良好な関係を作るチャンスなのかもしれない。