キャラメル vol.1

キャラに特化した雑誌というのは分かるが、どことなく意図不明な内容。ビジュアルに凝りたいのか、テキストで攻めるのか、データ重視なのか。濃くも薄くも無く、時流に乗っているのに、妙な拘りもある。ほんと、つかめない雑誌だ。
Fateの特集がかなりしっかりしているので、一応抑えたのだが、リリカルなのはについても結構ページを割いていて拾い物。ていうか、SSになってからの都築真紀のインタビューとしては最もしっかりしたものだろう。これはありがたい。「SS完成に至る道のり」として、構想過程もある程度語っている。
前作終了以前から都築氏に次回作構想があったというのは、以前読んだプロデューサーの話と同じ。だが、作品自体はその頃の構想とは全然違うものになったらしい。色々とパターンがあったとか。つまり、ほぼ一から始めたと言ってもよい状況だったのだろう。
9歳のままで話を作るとすると、より一層「思い切った内容」にする必要があったとか。つまり、あの年代の世界で描くべき事は、都築氏の中にはまるで無かったのだろう。
SSにおいてスバルが主人公であるということをかなり強調しているが、ティアの方が感情移入しやすいとか、「影の主人公」などと言っている。このあたりは、スバルを主人公として立てる材料が足りていない事を原作者自身が感じているかのようだ。
また、今までは敵が機会相手で感情移入出来なかったかもしれないけれが、これから(11話以降)どんどん面白くなります、などと監督自身が言っているあたり、この作品のスタートダッシュの遅さを、作り手自身はっきり分かっているようだ。
結局このSSというシリーズは、前作の好評から要望され、かなりあわてて作った作品であるという事が透けて見えてくる。それも、元々用意されていたものはほとんど無く、同一世界観では原作者自身が物語を作りえなかったので、10年後の刷新された世界観でキャラ構成を再構築し、ほとんど無から生み出すほどの労力が必要になった。
多分、このリリカルなのはというシリーズは、当初は都築真紀が単独で持ち込んだ作品だろうと思う。持ち込んだ時点から彼個人の中でかなり明確なストーリーラインも出来ていたのだろう。だからこそ、それが生かされている前作では、あれほどのパワーのある作品になっていた。
けれども、今回のSSではそのような下地が無かったようだ。元々ワンマンな作品でもあったので、時間が無いからといって共同作業に転換するのにも無理があったのかもしれない。
その為か、物語はこれまでかなりガタガタしていたが、ここ数話で(12話以降)物語の腰が据わってきた感じもする。作り手としても後半には自信をもっているようだ。実際に前半を作ってみて、ある程度流れが掴めて来ているかもしれない。
彼らの言葉を信じて、最後まで付き合うとするか。