ネギ最大の必殺技「開放(エーミッタム)」 〜魔法使いバトルの基本「詠唱時間管理」に関する諸々について〜

前回(242時間目)のネギvsラカン戦は、今までのネギの修行の集大成的なバトルであり、非常に見ごたえがあった。特に、ネギが本来純粋な魔法使いであるのに対し、ラカンは魔法は使えるものの、基本的には格闘系だ。単なる魔法の打ち合いによる力比べにはならなず、如何に相手に当てるかという駆け引きの点において、様々な技を組み合わせているあたりがとても面白い。
実際、ネギの修行の歴史は、魔力アップも当然あるが、なにより試行錯誤されているのが「如何にして相手に当てるか」という技の部分。このあたりのネギの技の獲得について、少し振り返ってみたい。

  • 前衛としてのパートナー

まず、魔法で敵と戦う際、ネックになるのが呪文詠唱時間である事が初めて提示されたのが、対エヴァ戦の時。(17時間目)
ネギは、学園結界によって魔力で劣るエヴァを追い詰めるが、そこに現れたエヴァのパートナー茶々丸によって魔法の詠唱を邪魔され、形勢は逆転する。パートナーによって守ってもらい、その間に呪文を詠唱をするという、魔法使いの戦いの基本がここで説明される。
パートナーによって時間を稼いでもらうというのも、立派な時間管理だ。これによって、ネギのパートナー選びという展開になり、実際に「魔法無効化能力」を持つ明日菜や、最強の剣技を持つ刹那などの前衛を手に入れることになる。
ネギは、基本的にお子様であり、体力面では心許無い。本来であれば、この方法に頼るだけで満足すべきだろう。しかし、ネギは自分自身が戦いたいという強い願いから、次の段階に進む事になる。

  • 最初に手に入れた時間短縮の技「遅延魔法」

次の大きな試練は京都修学旅行の時。(49時間目)大量に召喚された魑魅魍魎によって前衛を剥ぎ取られ、圧倒的力量差のあるフェイトに単身挑まねばならない状況。そこでフェイトに一矢報いたのが「遅延魔法」。タイミング的にそれが戦いの決着に影響を及ぼさなかったが、強敵を出し抜いたという点ではとても有効な技だった。
実際、この「遅延魔法」は、その後のネギの戦闘において常に相手への「とどめ」の際に使われている。高畑戦しかり、カゲタロウ戦しかり、そしてラカン戦しかり。内に秘めている魔法が、本来長い詠唱が必要な魔法である場合、相手の意表を突くことが出来るという点で非常に優れた技といえるだろう。
ただ、これには幾つかの弱点もある。まず、決して詠唱時間を無くす訳では無い、必ず事前に準備しておく必要があるという事だ。そして、遅延時間にもある程度制限があるらしいという事。これは鍛錬によって伸ばすことが出来るらしい。それに併せて、対象とする魔法の大きさも鍛錬に影響するようだ。
なお、この技は重複してかける事が出来るという利点もあるようだ。カゲタロウ戦の時には「断罪の剣・未完成」を三重にかけていたし、ラカン戦の時には「千の雷」と「雷の暴風」という超巨大魔法を二つ併せて遅延していたと推測される。

  • デコイ

幻影による分身を作り出し、それを相手に攻撃させて時間を作ると言うもの。カゲタロウ戦などで見られた。それなりに有効だが、街中で障害物があるなどの条件が必要になるだろう。また、知覚に優れた敵がいる場合なども考えられ(例えば、聴覚で敵を察知しているらしい調などには効かないかも)、必ずしも常に有効という訳ではないと思える。

  • 魔法格闘戦の基本「無詠唱魔法」

魔法使いは、常に呪文詠唱が出来るとは限らない。呪文を詠唱せずに魔法を出す事が求められる場合もある。この「無詠唱呪文」を可能にする事によって時間の短縮が出来る。ネギが最初に使ったのはヘルマン戦の時。(69時間目)光の矢一つだったが、目くらましとしては有効だった。(明日菜の無効化がなければ)
上位魔法使いにとって一般的な技であり、もちろん他の魔法使いもこれを使う。例えば、愛衣やエミリィなども使うし、フェイトの石の槍などもそうだろう。エヴァに至っては、難易度の高いと言われる「断罪の剣」を無詠唱でこなしてしまう。
ただ、無詠唱とは言え、魔力の高まりにはある程度の時間が必要のようであり、例えばネギは、高畑戦の時に魔法の射手9矢を使う際、遅延魔法を組み合わせていた。魔法の大きさと技の錬度によって魔法発動までの時間は違うのであろう。この「無詠唱呪文」は、戦いにおける魔法使いの強さのバロメーターと言える。

  • 究極の魔法と体術の融合技「闇の魔法」

魔法使いが格闘を行う際、攻撃魔法を身体に乗せて攻撃力をアップする事は、それなりに一般的なようだ。ゼロ距離魔法と打撃を同時に行うのだから、効率が良い。若しくは、これはスプリングフィールド家の伝統なのだろうか。少なくとも、ナギもこのような戦い方をしていた節がある。
そして、その戦い方の延長線上として非常に相性の良い技が、エヴァの固有技術であった「闇の魔法」だ。
この技は、魔法そのものを身体に取り込み、身体能力を向上させるというもの。身体の一部に取り込む「装填」と、身体全体に取り込む「兵装」がある。攻撃魔法の質に応じて上がる能力にも種類があり、風系でスピードを高めたり、炎系で力を高めたりすることが出来る。その能力向上量は莫大であり、「千の雷」を兵装する「雷天大壮」では雷の速さで動く事が出来たりもする。
さらに、この技のもう一つの利点として、取り込んだ魔法をそのまま放出できると言うものもある。つまり、一種の遅延魔法としても利用できるのだ。
詠唱時間は無くならないし、扱う魔法の大きさや時間にも制限があるという点では遅延魔法と同じだが、ストックしている魔法を最大限有効に活用していると言う点において格段に優れている。一種遅延魔法の上位魔法とも言えるかもしれないが、その技の本質から言って全く別種の、究極の魔法活用技だろう。

  • 「エーミッタム」と唱える時

結局、攻撃魔法において一番重要な事は、相手に魔法を当てることだろう。その為には様々な方法を使って、相手の虚を突き、護衛を倒し、魔法障壁を破り、接近して、攻撃しなければならない。相手が人間ならば、魔法の射手一つでも戦闘不能にする事が可能かもしれない。それはネギ自身が攻撃を受ける時にも言えることだ。
ネギが一人で戦いたいと決めた時から、ネギはこの命題と向き合ってきた。様々な方法を取得し、今では格闘戦の最高峰とも言える人物ラカンとの戦いにおいても、全く引けを取らない戦いが出来るほどになっている。この戦いにおいても、最も重要だったのが詠唱時間の管理だろう。前衛を務めてくれたコタローによって時間を稼ぎ、その間唱えた「千の雷」「雷の暴風」を「遅延魔法」し、それを開放して「闇の魔法」、そして「とどめ」のゼロ距離攻撃。全ての攻撃魔法を「遅延魔法」「闇の魔法」の詠唱時間管理によって有効に活用できたからこそ、あのラカンをダウンさせるまでに至ったのだ。
「遅延魔法」も「闇の魔法」も、その力を「解放」して敵に当ててこそ、最大の効果を発揮する。それは、今までのネギのどの戦いにおいても、形勢を逆転させるほどの効果があった。
面白いことに、ネギが始めて「エーミッタム」と唱えた「遅延魔法」は、誰からも教えられていない。ネギが戦闘に使えると自身で考え出し、投入した技だ。そして、今の「闇の魔法」でも「エーミッタム」と唱え、それがネギの決め技になっている。
「開放(エーミッタム)」こそ、ネギにとって最大の必殺技にして、ネギの魔法戦闘の象徴とも言える詠唱だろう。