アニメ道で長崎行男音響監督が語っていた、最近の新人とか声優のお芝居の話

このイベントで、長崎行男音響監督は本当に沢山興味深いエピソードを語ってくれていたのだけれども、具体的なエピソードは結構ヤバめの内容だったので、それを日記に書く事は出来ない。
けれども、新人声優のあり方についても多く語ってくれていて、それはこちらとしてもとても気になっていたことであり、今後も色々思い返すことになる事柄だと思ったので、どうしても書き留めておきたい。もちろん、ツイートを止められた部分は外してある。はず。

  • 演技指導の話から

良い芝居の為には全ての音域を使うべき。普段は使っているはず。

  • アイドル的な声優について

最近の声優さんは「自分」でやっている人が多い。すごく上手いと思ったら、別の役だとそうでもないことがある。それは顔出しの役者と同じ感じ。けど、アニメの声優は少し違うはず。

  • アフレコ現場で生き残れる声優とは

上手い人とは演技が上手いとかじゃない。ホンを読んで、セリフを理解している人。監督よりも理解しているくらいで監督に意見を出せる人。他の声優も、その意見の交換についてこれないとダメ。本当は新人声優にはそういった現場を見て欲しい。その内容を理解できるクレバーさが欲しい。声優に必要なのはなによりその役を理解すること。役者はその役を生きるということなのだから。

  • アニメ演技の特殊性について

日常系アニメが流行ったせいで、最近の新人はナチュラルな演技が好き。叫べない。距離芝居が出来ない。
地面に足がついているのが日常。けどアニメは少し浮いている。そういうお芝居が出来ない。

  • 役を作るとは

声を変えなくても、気持ちを変えれば役になる。声は作るな。役を作れ。気持ちがあれば万人が聞いてもその役に聞こえる。自分をコピーして役にするのは違う。

  • 新人声優を厳しく指導する理由から

リアリティは滅茶苦茶細かいところで崩れ去る。例えば死にそうなキャラが元気な声を出せば、物語の中の現実が崩壊する。

本当は具体的なエピソードとか交えてもっと臨場感のある話だったのだけれども、それらを削っているので実際の話より淡白な感じになっているかもしれない。本当にとてもわかりやすい話をしてくれる人だった。
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以前、この日記で「最近の若手の声優は最初から良い声を出す人が多いが、その理由はファンから求められている声を新人が理解しているからではないか」という旨を語ったことがあるのだけれども、それに通じるような現場の生身の言葉が聞けてとても興味深かった。
ファンの求める声を提供してくれるという事は、それはそれで良いことだとは思うのだけれども、ただ、それがある意味画一的になって汎用性、順応性が無くなれば、アニメ制作現場の脆さになるのではないかとかという危惧も、少しだけ感じていた。それを正にプロの現場の声としてきかせてくれていた。
物語を堪能するには、作品全体でバランスがあり深みのある音響こそが大切であり、それがなければ根幹である作品の魅力が損なわれてしまう。
声優ファンとしては、気持ちの良い声を求めるという立場は変わらないし、アイドル声優という存在についても楽しみたい。このようなブログでは、そういったことばかりを書きがちだ。
けれども、アニオタとしてはやはり質の良いアニメを楽しみたいわけで、それはこういった音響の現場の頑張りによって成り立っている。そのことを改めて知ることができて、とても興味深い体験だった。
他にも、宍戸留美のプリリズ現場でのエピソードとか、とても興味深い話もあったのだけれども、それは今度出るらしいプリリズのムック本に掲載されることを祈ることとしよう。